円安の弊害と対策(その1)

2021.04.01

朝邉博史

海外に旅行に行ったとき、良く感じるのは、円は実力以上に安すぎるのではないかということです。ミネラルウォーター1本が、日本のコンビニで100円前後で売られているのに、欧米では、円換算で150円から200円前後のものをよく見ます。日本のお金の価値が下がったように感じます。

その国の通貨の実力を計る指標として為替レート以外に、ビッグマック指数というものがあります。これは世界中で展開しているビッグマック1個を、その国の通貨でいくらで買えるかを基準にして比較したものです。2021年1月の指数で、アメリカを100とした時、為替レートと比較した数字で日本の円は、33.9%過少評価されています。同じく中国は38.9%過少評価、スウェーデンは12.6%の過大評価、スイスは28.8%の過大評価となっています。

世界の先進国の中で、日本の円は、ほぼ中国に近いぐらいの過少評価となっています。ここまで円が安く評価されているということは、日本人のお金が、不動産を含む財産が、世界で実力以上に安く評価されているということです。

その原因は、日本企業の生産性が低いという訳ではありません。最大の原因は、日銀のマイナス金利、ゼロ金利政策と異次元の金融緩和にあります。

他の要因に変動がないことを前提にすれば、欧米の通貨を持っていれば利息がつくわけですから、(現在は先進各国とも低金利で以前ほどの金利差がない)日本と欧米の金利差分、毎年、円安が進むことを意味しています。

何故、日銀は、マイナス金利、ゼロ金利政策を続けるか。それは、1000兆円を超える国債残高を抱える、日本の国家財政の破綻をさせないためです。(表向きは、2%のインフレターゲット達成のため) 別の角度から見た言葉で表現すると、国民の富(本来、利息がつくはずの国民の預貯金)を犠牲にしている政府、日銀の失態という見方もできます。